THE THEATERS
Reports
2020-03-06
エレキギター/村田新世界
たしか中学2年の誕生日だったかな?
僕は「エレキギターが欲しい」と親父に告げた。
成績も低迷し、反抗期真っ只中の僕に親父は「勉強もまともに出来ねぇやつにギターなんかダメに決まってるだろ?」と一喝し、その後僕らは喧嘩になった。
誕生日のお祝いに来てくれてた親父の従兄弟には本当に申し訳ないと思いながら、自分の部屋でしばらく不貞腐れていた。
その後、親父が部屋にやってきて「おい!ケーキ食べるぞ!」って言った。ムカついた。
その後の
「志望校に合格したらギター買ってあげるよ」という母との約束の為だけに勉強をして合格圏外から志望校へ見事合格。
直前の模試での判定はE判定からD判定にやっと1ランク上がった程度思う。よく合格できたものだ。
合格発表の後、母親は嬉しくて車の中で泣いていた。たぶん、努力してたのを見ていてくれたのだろう。
でも、僕はその時、当たり前のように絶対に受かると思っていたので「泣かんでいいやろ。」と冷たく母に言った気がする。
どこからか湧いてきた謎の自信があった。
もし志望校に受からなかったらギターが手に入らない。
ギターを弾くことのできない人生なんて「終わっている」当時の僕はそう思っていた。
でも今思えば「終わっている」ではなく、
今の僕の言葉を使うなら「始まらない」と表現するだろう。
そう、もし志望校に落ちたら人生、始まれないのだ。
たぶん、ギターという秀逸なご褒美がなければ僕はあの高校に行ってなかっただろう。
合格発表の直後、カツアゲにあわないかだけが心配で当時持ってた服で一番気合の入った格好で現金10万円を財布では無く、靴下の中に入れて北九州の小倉の街に当時、「バンドを組もう!」と話していた小林くんと2人で繰り出した。
ギターを買ってきて、小林くんと音を鳴らした。
2人で一緒にギターで曲を弾いた。
2人で鳴らしたあのギターの音だけで閉鎖されたように目の前にあったとてつもなくデカい壁の扉が次々に開いていくような感覚に取り憑かれた。
これだけで世界をぶっ飛ばせると思った。
その後、ベースとドラムを見つけてバンドを組んで夢中になった。
高校入学後、成績は学年最底辺をずっと進み続けていた。
あの頃の母に僕の高校の成績を確実にあげられる方法を今の僕なら教えられる。
学年10位以内に入れたら「30万までのギターならなんでも買ってやる!」そういえば、どんな月謝の高い塾に行かせることよりも効率的に勉強をさせることができたと思う。
いや思い返してみればそんなことをもしかしたら言われたのかもしれない。
でも、僕には無敵のエレキギターがもうすでに握られていた
あの時、高校の合格発表の後に買いに行ったギターを今も僕は変わらず鳴らしている。
あの頃の僕にみんなの力を借りて、渋谷のビジョンに君のそのギターが映るんだよって
村田新世界
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